講師の高木です。
このコラムではスピーチを控えた皆様や
人前で話す皆様向けの記事を掲載しています。

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複数の方から同様のご質問をいただきました。
プライバシーを配慮し一部情報をアレンジさせていただきます。

Q:人前での話の際、あがります。
人前に出る機会も増えるため困っています。
あがるのは性格のようなものでしょうか?

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同様のご質問をセミナーやレッスン時に多数いただきます。
人前の話のあがり緊張問題での私の答えはいつもこれ。

「いきなり本番にしないでくださいね」
「あがったらゴーサインですよ。」
「あがりながら続けてくださいね。」

これは一見、根性論。
しかし理にかなった手法と自負しています。

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あがり緊張問題は医師や臨床心理士ら
専門家のケアが必要なケースもあります。

ここでは、人前で話す際のあがり緊張対策を
一種のSST(=ソーシャル・スキル・
トレーニング=社会訓練)と位置付けたうえで、
話し方のプロであるアナウンサー視点で
あがり緊張対策を紹介します。

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まずは「いきなり本番にしない」というポイントから。

これは「スモールステップ」の手法です。

スモールステップは文字通り、小さな階段。
人前で話す際に小刻みな準備段階を入れるのです。

スピーチや発表の前に、まず挨拶や雑談で声を出す。
・立ち位置に立って、光や来場者の視線のイメージを確認する。
・手元にメモをもって、声を出してリハーサルをする

こうしたことを行わずにいきなり本番になるから
どうしても緊張度が上がるのです。

スモールステップの作業は、
あがり緊張対策で欠かせないの予防策なのです。

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次に、「あがったらゴーサイン」というポイント。

これは「リフレーミング」の発想法。

リフレーミングは思考フレーム再構築
「あがったら話せない、逃げたい」と考えがちですが
「あがったまま話せば好印象。むしろチャンス。」
などとと思い直し、思考フレームを再構築
することもできるわけです。

あがったまま、汗を流しながら、顔色が紅潮したり
青ざめたりしながら話す姿は、ご本人様にとっては
この上ない苦痛でしょうが、実はライカビリティ

(likeability=好印象の材料)となり
多くの人の共感材料にもなります。

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そして、「あがりながら続ける」というポイント。

これは脳の馴化(じゅんか)と関与しています。

馴化(じゅんか)はひとことで言えば
馴れること、飽きること
私たちの脳は、慣れが生じるようにできているのです。

人前の話の目的は、メッセージの伝達
極度の緊張だから伝えるのをやめる、というのは
一時的な休息ではOKですが、あくまでも一時しのぎ。

「あがりながらも話し続ける」という行為は、
メッセージを「伝える」という目的の達成となり、
聞き手や対象者への現実的対処にもなります。

あがったまま、続ける。

あがり症・緊張体質の方にとって
これは実に過酷なワークですが、
とても重要なポイントでもあります。

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私も生放送のスタジオで、幾度となく顔を紅潮させ
あがったまま、上滑りの声で話続けていた時期があります。

今でも準備不足の時や、コンディションが不十分な時は
極度のあがり緊張の症状が出ます。

アナウンサーもあがるのです。

私の場合、あがる自分が不甲斐なくも感じるのですが
それも当然だと最近思うようになりました。

私のの場合「あがったまま伝えることは出来る。」と
いつも自分に言い聞かせています。

事実、私はあがり緊張を感じながらも、これまでに
2万人規模の球場での高校野球実況を担当しましたし、
今もフリーアナウンサーとして数百人規模の会場での
シンポジウム司会等を担当してきました。

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あがり緊張問題で長年悩んだ皆さん、
ここから数年がかりの勝負でもよいのではないでしょうか。

対策を急げば急ぐほど、緊張度は高まりがちです。

丁寧に手順を踏んで、人前で話すトレーニングを重ね、
対処法を知り、一定の理論を学べば、
「あがりながらも十分対処できる」
という実感を増やせるはずです。

あがり緊張問題は
脳・神経伝達物質・自律神経等が関与しています。
この脳や神経系の変化にはどうしても時間が必要です。

すぐにあがり緊張が治るような魔法のような方法は
私は「疑わしい」と考えています。

人によってあがり緊張問題は本当に深刻。
個人差も大きい問題です。

ですが「伝える」ということを重視すれば、
話す、確認できる、安心材料になる、という
好循環の流れができるはずです。

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スピーチや発表であがるのは当然です。

あがりながら伝えても良いのではないでしょうか。

あがり緊張はGOサイン。

そんな考え方もあることをぜひ知っていただければと思います。

このコラム、長文となりましたが、
私からの重要メッセージとしてあえて区切らずに記しました。

長文をご一読いただき、誠にありがとうございます。
皆様のヒントになれば幸いです。
(講師:高木圭二郎)